福井晴敏本

最近、といっても半年ほどですが、遅ればせながら福井晴敏の本にハマっています。
もともと、「ローレライ」や「亡国のイージス」原作者として名前は知っており、どちらかといえば「映画の原作になるようなミーハーな小説家」というネガティブな印象を持っていた作家なのですが、本人の事実上の処女作である小説を読んで、その評価が一変しました。

それが、

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川の深さは (講談社文庫)

その後、長編としては「終戦のローレライ」以外で、否「ローレライ」にも基本として流れる福井晴敏の小説の基本ラインとなる、「人生の敗残者だった中年男と、若者のコンビが、防衛庁幹部の暴走による日本滅亡の危機を救う。ストーリーに重要な局面で絡んでくる美少女もあり」というあらすじのスタート地点である小説です。出版は2000年の9月ということで第4作にあたりますが、書かれたのは一番先でしょう。

今回のくたびれた男は元警察官の警備員、若者は福井作品おなじみのDAISの工作員、美少女はDAIS工作員の警護対象の娘。

この小説のギミックは次回作であり、乱歩賞を受賞した福井晴敏のデビュー作となった作品のギミックに継承されることになります。

それが、

Twelve Y.O.福井晴敏←リンククリックで購入可能
Twelve Y.O. (講談社文庫)

こちらのくたびれた男はある事件が原因で飛べなくなった元敏腕ヘリコプターパーロットで今は自衛官の勧誘連絡員、若者はDAIS工作員で美少女も元同僚。

前作から継承されたギミックはさらに新しいギミックを持ってとんでもない大事件を巻き起こします。そしてその大事件とも密接に関係した形で次回作であり、福井作品初の映画化となった作品につながります。

それが、

亡国のイージス 上(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
亡国のイージス 上 (講談社文庫)
亡国のイージス 下 講談社文庫 ふ 59-3(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
亡国のイージス 下(講談社文庫)
亡国のイージス(単行本)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
亡国のイージス

このシリーズの最高峰でもあるこの作品。Twelve Y.O.のギミックを二重三重に取り込んだ形で話が進み、「川の深さは」、Twelve Y.O.の間の結びつき以上の結びつきを持っています。当然Twelve Y.O.の登場人物もかなり登場してきます。

くたびれた男は舞台となる古びたイージス艦の先任海曹、退役間近のおっさんですが、映画では真田広之がやっているというありえないキャストです。若者はまたしてもDAIS工作員で絵という共通の趣味でおっさんと工作員の間に関係が芽生えます。で美少女は敵方の人間兵器。今回は美少女との絡みはあっけなく希薄でしたね。
しかし舞台的にはもうこれ以上行き着くところがないところまでエスカレートしたためか、次回作は舞台をがらりと変えて、現代から太平洋戦争へ移します。*1

それが、

終戦のローレライ〈1〉(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ(1) (講談社文庫)
終戦のローレライ〈2〉(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ(2) (講談社文庫)
終戦のローレライ〈3〉(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ(3) (講談社文庫)
終戦のローレライ〈4〉(文庫)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ(4) (講談社文庫)
終戦のローレライ 上(単行本)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ 上
終戦のローレライ 下(単行本)」福井晴敏←リンククリックで購入可能
終戦のローレライ 下

原作ありきで映画が作成されたのではなく、基本のストーリーがあって、小説と映画とが同時期に製作をスタートした、という名作「終戦のローレライ」。そのため映画は小説の下巻からスタートし、フリッツ・エブナーが登場しません。ぼくは単行本で読みましたが、上巻のゆったりとした進み具合からは一転して下巻は一気に読ませる作品でした。

映画は香椎由宇のみが印象的な映画でしたね。
ちなみに「疲れたおっさん(館長)が狂信的な上官(朝倉)の暴走を阻止すべく若者(折笠)と美少女(パウラ)の手を借りて…」という基本ストーリーは時代が変わっても不変だったりします。

この後はDAISのスピンオフストーリーである短編6ステイン、未読ではありますがこれはノベライズにあたるのかどうなのか戦国自衛隊1549といった作品がある福井晴敏ですが、今後はいったん、「川の深さは」〜「終戦のローレライ」の基本ストーリーから外れた形での小説を発表してくれたらいいな、と思いますね。
これだけの分量を読んだところで、福井晴敏ストーリーテラーとしての才能は明らかなのですから、いつも話してるお話以外のお話を聞かせて欲しいものですね。

*1:正確には間に「∀(ターンエー)ガンダム 月に繭 地には果実」が出版されていますが、未読です。