今年の10冊

  • 1位「薬指の標本小川洋子
    • 読んだ当時の感想には「すごい本です。とにかくすばらしい本です。短い中編2編が収められた本なのですが、2編ともすばらしいお話しで、何度も読み返しました。読み返すたびに新たな思いが心に流れ込んでくるようなそんなすばらしい作品でした。」と書かれています。圧倒的な静謐さを持った小説でした。
  • 2位「Op.ローズダスト(上)(下)福井晴敏
    • 圧倒的な名作。今までの福井晴敏の枠を軽く飛び越えたストーリーに圧倒され、上巻途中からは他のすべての情報を遮断して一気に読みきっりました。今までの福井作品といえば、くたびれたオヤジと、心に傷を負った少年との心の交歓にあったけれども、今作は親友同士だった青年の心を軸にストーリーが進んで行きます。今までのストーリーとの融合もなく、余計な知識を得なくとも一つのストーリーとして楽しく読める点でも、今までの福井作品を軽く凌駕しています。福井晴敏の代表作となりえる1冊というだけでなく、日本の文学史にも大きな足跡となるエンターテイメントの誕生だと思いました。
  • 3位「ひとがた流し北村薫
    • 美しい言葉でつづられた、美しく、そして切ない物語。涙なしでは読めませんでした。このひとの本は本当に「美しい」。寡作な方なのでまたしばらく読めないと思うと残念です。
  • 4位「壬生義士伝 上浅田次郎
    • 一人の新撰組隊士の人生をさまざまな人間が語りつつ、その人の人生をなぞって行く時間軸がいくつも重なる小説。人間の心を生き生きと描いた大変な秀作です。ラストへ至る下巻半分は新幹線の中でぼろぼろ泣きながら読みました。柴崎コウではありません。亡くなった父もよく声を上げて泣きながら本を読んでいたそうです。遺伝です。
  • 5位「シェエラザード〈上〉〈下〉浅田次郎
    • 実際に起きた阿波丸事件を下敷きにし、昭和20年のシンガポール、阿波丸船上、そして現代の東京を舞台にドラマが動きます。この人の小説は本当に面白い。エンターテイメントです。
  • 6位「夕子ちゃんの近道長嶋有
    • 手に取るまでタイトルで勘違いしていましたが、童話ではありません。また、解説にも連作短編とありますが、ストーリー的につながっているので、どこから読んでもいいわけではありません。そういう意味では長編だと思います。川上弘美さんの「古道具屋中野商店」と舞台設定が重なりますが、こちらはいつもの長嶋ワールド。たのしく読めました。
  • 7位「亡国のイージス 上福井晴敏
    • 小説としてストーリーは秀逸。しかし「川の深さは」、「Twelve Y.O.」と続く「DAIS」シリーズももうこれで3作目、狂った指揮官の暴走と、それを阻止しようとする若いDAIS工作員とくたびれた中年男って言うパターンはいい加減変えないと飽きられないか?と思ったものですが、OP.ローズダストでその苦言もあっさり解消。さすが。
  • 8位「蛇行する川のほとり恩田陸
    • ぼくが読んだのは3分冊になったものでしたが、それをまとめたものです。まるで漫画のように風景が思い描かれる美しい作品でした。 あるひとつの事件を3人の視点で描く作品のため、3分冊に分かれていました。3分冊で読むのも気分でイイですよ。
  • 9位「博士の愛した数式小川洋子
    • 初めて読んだ小川洋子作品。とてもすんなりと入り込める一冊でした。とても言葉を大事に扱っていて、長嶋有北村薫川上弘美どなたかのファンであればとても楽しく読めると思います。
  • 10位「泣かない女はいない長嶋有
    • 長嶋有の本に外れなし。女性が主人公なのは珍しい。ボブ・マーリーの「No Woman,No Cry」をモチーフに話が進む、ちょっと大人でちょっと子供な女性の恋物語でした。