2008年の10冊
今年は8月末に足を骨折し、しばらく電車通勤を断念しなくてはならなくなりました。
そのため通勤時間は長くなったにもかかわらず153冊と昨年に較べて微減しました。
今年も種々雑多な本と出合うことが出来ました。
穂高明という新たな才能に出会うことも出来ましたね。
1. 「中原の虹」浅田次郎
蒼穹の昴に続く中国近代物。ストーリーも蒼穹の昴を受けてのものですが、大団円ヘ向かってあっという間の4冊でした。ただ、中原の昴で終わりではないような気がするのは自分だけではないはず。これからの天命の行方も気になります。
2. 「月のうた」穂高明
児童文学の登竜門、第2回ポプラ小説大賞の優秀賞受賞作ですが、これがデビュー作とは思えないくらいクオリティ。
登場人物の魅力、ストーリーの面白さ、文章の美しさいずれも素晴らしく、大人が読んでも楽しめました。文章の美しさは小川洋子、北村薫に近いものを感じました。
3. 「夜のピクニック」恩田陸
どんなジャンルを描かせても天下一品の恩田陸。
今作は学校行事の深夜歩行で起きるさまざまなこととそれまでの思い出も絡めて、異母兄弟の心の邂逅を描いています。甘酸っぱく、心がさわやかになる本でした。
4. 「上と外」恩田陸
隔月文庫で6巻出版される、というスティーブン・キングの「グリーンマイル」と同じ手法で描かれた児童小説。児童小説とくくってしまいましたが、少年が主人公の冒険小説というだけで、十分に大人の読書に耐えるのは、恩田陸なら当然。
5. 「サウスバウンド」奥田英朗
破天荒な元左翼でアナキストの父とその仲間、そしてクラスメートたちとの摩擦を軸にした東京篇と、西表島に移住後の出来事を軸にした西表篇。がらりと変わる環境でも父のポリシーは変わらず、そして強くなっていく主人公の姿も楽しい小説でした。
6. 「ハピネス」嶽本野ばら
心臓の病気であと1週間の命と診断された恋人と主人公の最後の旅行を描いています。
野ばらちゃんの小説はこれにてすべて読破しました。相変わらず美しくて、面白い、そして悲しいお話でした。
7. 「ライラの冒険」フィリップ・プルマン
そのテーマと話の展開と映像化の問題から第2部以降の映画化が危ぶまれ、金融危機の影響で無期限製作延期が決定してしまった本作。
キリスト教の原罪をテーマにしながら、生と死、愛や夢など様々なテーマに取り組んだ意欲作です。これはファンタジーですが、童話ではありません。大人向けの小説ですね。
アメリカ人はバカだし、日本人はアメリカ大好きなので、この小説や映画の面白さが理解できなかったらしく大ヒットとはいえなかったらしいですが、ヨーロッパでは大ヒットしましたね。
8. 「1950年のバックトス」北村薫
ミステリを書かせても、文学を書かせても、SFを書かせても天下一品のストーリーテラーにして文学の芸術家・北村薫の短編集です。
短編集なのは残念ですが…、うまい。早く長編が読みたくなりますね。
2回連続で直木賞を逃している北村薫ですが、この人には直木賞も何も関係ないですね。