2007年の10冊

こちらは刊行年関係なしで、今年読んだ作品から10冊選びますよ。

  • 1位 「霞町物語」浅田次郎
    • 1998年刊行の連作短編集。都電の走る頃の霞町を舞台にした少年の成長を描いた物語でした。楽しくて美しくて悲しい小説でした。
  • 2位 「燃えよ剣 (上) (下)司馬遼太郎
    • 1962年刊行の司馬遼太郎の代表作ですね。何と今まで未読でした。数多あるトシの話の中でも最も生き生きと描かれていると思います。今まで読まずにいたことを後悔しました。
  • 3位 「失われた町」三崎亜記
    • 2006年刊行の2007年本屋大賞ノミネート作品です。SFの形態を取っていますが、あくまでもそこに描かれるのは愛。三崎さんはこの作品が3作目となりますが、今後がとても楽しみな作家さんです。
  • 4位 「プリズンホテル 春」、「プリズンホテル 冬」浅田次郎
    • 浅田作品です。4部作の3、4作目ですが、あえて一緒に入れさせてもありました。1、2作目ではコミカルな部分がクローズアップされていましたが、この3作目から徐々にテーマがお清と孝之介の愛、そして孝之介と富江、実母との関係へと話が大きく動いていきます。大団円へ向けての話の畳かけ方は、連作の形を取っているとは思えないほどのうまさでした。
  • 5位 「いつかパラソルの下で」森絵都
    • 2005年刊行。児童文学で知られる方ですが、きちんと大人向けに耐えられる作品も書かれます。父の一周忌を機にひょんなことから父の足跡を探す旅に出なければならなくなったきょうだい3人。それぞれが心に抱えた堅物の父への思いや、自分に流れる血を再認識して行く過程が丁寧に描かれていました。父の性格、そして佐渡の舞台が昨年なくなったわが父を思い出させてちょっとほろりと来ました。佐渡はぼくら5人家族の最後の家族旅行の舞台でした。
  • ★6位 「悪人」吉田修一
    • 著者本人も「L25」連載のエッセイで「大評判」と言っていた、長編。たしかに吉田さんの著作の中では最高傑作と呼べる内容です。今までにないテーマをものすごく真摯に書き抜いています。
  • 7位 「最勝王」服部真澄
    • 前作「海国記」が、平氏の一門を描いたがためにテーマがぼやけてしまったのに対し、今回は空海に特化した分とても楽しい小説として読めました。そして真の歴史小説家としてのデビューとして、服部さんの今後を祝したいですね。ただ、今までどおりの現代小説も書いてほしいものです。
  • 8位 「ミーナの行進」小川洋子
    • 二人の少女の1年間をひっそりと書いている本です。小川さんの本はエロティックで大人向けのイメージもありますが、これは中学生くらいの女の子にも読んで欲しいですね。
  • 9位 「空飛ぶタイヤ」池井戸潤
    • 直木賞北村薫さんの「ひとがた流し」と争い、残念ながら該当なしとなった池井戸潤入魂の作。珍しく三菱自動車のタイヤ欠落事件という実際の事件をデータベースにした半ノンフィクション。とてもよくかかれた小説です。僕の中では両人とも選出、と言う感じ。
  • 10位 「出口のない海」横山秀夫
    • 警察小説を得意とする横山さんの珍しい戦時小説。結末は分かっていても、主人公たちの行き方が気になってならない小説でした。横山さんには珍しい青春小説ですが、とても面白かったです。